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    連作短歌100首『未完のパズル』

    • 2014.02.10 Monday
    • 17:02
    『未完のパズル』100首


    91〜100


    91.一行のヴェルレーヌにも若かぬわがひと世に一輪パンジーを挿す



    92.ささやかな詩でこそあれわれわれはみな行間の住人である

     詩(うた)

    93.ぢき終はる時代の窓にありし日のこもれび乗せて揺るるぶらんこ



    94.をりからの景を秘めたるわがこゝろなれば随想録と名づけよ



    95.まうすこし鳩でゐようよ公園へゆく緑道にゆすがれながら



    96.さいごに泣いたのはいつだらう わが森の最奥で深くふかく息する



    97.ゆくゆくは詩溜まりとなる詠草の余白さやけし緑道をあゆむ



    98.ぢきに陽は傘をこちらへ呉れるから僕らつかのま脚韻を踏まう



    99.枠組のないみちをゆく影と影ながながし日の下わかつまで



    100.それぞれの明日へむかふ銀杏並木のもときつときつとまた逢へるでせうね

    連作短歌100首『未完のパズル』

    • 2014.02.10 Monday
    • 16:53
    『未完のパズル』100首


    81〜90


    81.卒業は保証なき明日あしたまた逢へるひとらはゐるといふのに



    82.後期末 出席カードを引つ提げてレゾンデートル売りがやつて来る



    83.ただ一度かよつた大学図書館にさへ名はのこる時代ですから



    84.逢へるひとがゐる秋されの天の川通りに枯葉は星とながるる



    85.カーテンへ日脚は伸びて冬どなり来年もきみをおもふのでせう



    86.自由詩の頁はおもく小夜すがらわが水槽をさまよふ游魚

     游魚(ゆうぎょ)

    87.笑ひ方わすれつちまつた道化師の涙ひとすぢ分けてください



    88.いちじつの終焉つげる停車場の恋人たちはあはく接吻する

     接吻(キス)

    89.ひととせの手帖をめくるわがために時間を呉れるひとの在ること



    90.梓弓はるけき朝にページ繰る音さへ冱えて初秋のそら

    連作短歌100首『未完のパズル』

    • 2014.02.10 Monday
    • 16:42
    『未完のパズル』100首


    71〜80


    71.革命の前夜うまれてはじめての鶴を折りをり握りつぶさむ



    72.風情つてなんだらうねとひとりごつ冬の夜長に鳴く腹の虫



    73.誰がために祈る季節か初雪のふる停車場で掌をすりあはす



    74.あふれさうな福音としてクリスマスカードはやはき掌に奏でらる



    75.たれもかれも麒麟となれば停車場の宵待草を程なく食めり



    76.一面のやうやく揃ひしルービックキューブの肌に国がまへ見ゆ



    77.今なにを生甲斐とせむ縁のなきジグソーパズルのそらはひろがる



    78.得るもの何もなき日もあらむ悉くゆるる夕影草の放曠

     放曠(ほうこう)

    79.しづもれる夜のほとりと親しめば吾はおのづから詩語となりうる



    80.銀鶴の切手を鶴見区のポストといふポストにはるゆめがある

    連作短歌100首『未完のパズル』

    • 2014.02.10 Monday
    • 16:28
    『未完のパズル』100首


    61〜70


    61.梟のためいきといふ二つ名をもちて眠りたし締切間近



    62.韻文はなほ廻るらむ叢雨にしとど濡れたる歌集のにじみ



    63.日の入りを憂へてゐるか珈琲の螺旋さかしまになぞる冬至日



    64.そらからことばが降つてこぬ夜はそらの涙を聴きつつ眠る



    65.この道のゆくへも知れず脚韻のひとつ欠けたるわれのソネット



    66.マスオさんの驚くこゑのアラームで二度寝きめこむ月曜病

     月曜病(ブルーマンデー)

    67.死してのち偉人となりし肖像にたれもが見えて晩冬のそら



    68.夜明しにあまた理由あり 課題 娯楽 空腹 時はひとしく在らぬ



    69.なりたいものになれたひとはどれほど 漱石忌まだ月は見えない



    70.不可逆の風にさらされ果たし得ぬものの重さをはかるシーソー

    連作短歌100首『未完のパズル』

    • 2014.02.10 Monday
    • 16:13
    『未完のパズル』100首


    51〜60


    51.黎明のわかれぎは きみの声を背に夢遊病者でありたかりしを

     黎明(れいめい)

    52.幾千の詩が白雪にそまるまで いつかのベリーメリークリスマス



    53.師走晦日までに校了せむ こゝろ亡べばゆたけき我樂多文庫



    54.返り点でかでかとつけ「文法がなつてない」赤を入れてやらうか



    55.越えられぬ九月なりしかあかときの文字のかすれる原稿を見つ



    56.ひとやすみの席にたまりし夕照を吸つてすつかり朱の差せる稿



    57.街宣車が「雪やこんこ」と早うたふ霜月初旬ゲラまちのぞむ



    58.韻文はいづくにあらむ夕さりの徐行列車のゆれ数へつつ



    59.早鐘のごとく時計の鳴りにける夜は三十一の音つよかりき

     三十一(みそひと)

    60.窓をうつ夜雨は夢のあとさきのやうに響けり 歌詠みふける