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    選歌その28

    • 2014.11.09 Sunday
    • 18:41
    028:塗(TrackBack数1〜84)

    ■塗り残しばかりがめだつ自画像を描きながら日々暮らしています(五十嵐きよみさん)

     日々の暮らしとは、自画像へ色を塗るように「自分」を表してゆくものなんでしょう。十人いれば十色の自画像があります。顔かたちだけ描いて色塗りしていないもの、丁寧に輪郭に沿って縁取りしてからその中身を塗っているもの、斜線をいれるようにシャッシャッと薄く重ねた線で色づけしているもの、縦横無尽に奔らせた色鉛筆でもって力強く濃く彩られたもの。主体の自画像は、どうやら塗り残しばかりがめだつもののようです。まだあちこち自分の色を表せていない部分がある、と。それを嘆いているのか、自虐しているのか。はたまた、これからその塗り残しを余さず色で埋めてゆこうとする、向上心の表れなのか。そうでありたいですね。この歌を読んで(少しだけですが)、Mr.Childrenの『Any』という曲を思いました。

    選歌その27

    • 2014.11.07 Friday
    • 16:51
    027:炎(TrackBack数1〜87)

    ■どのようなこころの加減 たんぽぽの綿毛が白い炎に見える(五十嵐きよみさん)

     はっとさせられる視点です。気づきの歌。たんぽぽの綿毛が風に揺らめいている様は、成程たしかに白い炎のようです。色温度によると、白色の炎は、赤や橙などの暖色よりは高温、青などの寒色よりは低温の位置づけにあります。それを踏まえて読むと、白い炎に見えた主体の心模様は、特段充たされておらず、かと言って何か不自由や不幸を感じてうそ寒い心持でいる訳でもない、曖昧模糊とした状態なんだと思います。だからこそ、本来ならば(短歌のひとつのあり方として)どのような心持であるかを明示して然るべきところを、どのようなこころの加減か自分でも表し得ず、自問し、読者に委ねられているのでしょう。それと言うのも、日常をつつがなく過ごせているからこそなのかしれませんね。

    選歌その26

    • 2014.11.05 Wednesday
    • 18:06
    026:応(TrackBack数1〜88)

    ■応接間のソファーにふかくしづみこみこどものままでだれもゐられぬ(ほしさん)

     上下の句に関連性がまるでないようでうまく説明できないんだけれど、確かにそうだなあと頷かせる謎の引力のある歌だと思います。ソファーに深く沈みこむという所作は、たとえばひどく疲弊している時、たとえばとても眠気を催している時、たとえばいたく考え事をしている時、たとえば無垢なる気持を持ち合わせている時、様々な気の表れを感じます。この歌ではその全てが当てはまるように思います。大人になって、社会に出て、人付き合いがどうだとか、体裁がどうだとか、思うところが色々と増えてきた。もしかすれば何か悩み事を抱え持っているかしれない主体は、客人をもてなすための部屋でひとり、幼さに還りたいという希求を持て余しては「こどものままでだれもゐられぬ」と理解しているのでしょう。応接間のソファーとは、そうした主体の複雑な気持の象徴のように思います。

    ■風鈴が風に応える すなおだけで生きていくのは難しかった(白亜さん)

     風がそよぎ、風鈴がそれに応えるようにちりんと鳴る。成程すなおな景だと、一読はっとさせられ、下句(特に過去形の結句)に胸を刺されました。一字あけの時間的な間が効いていて、三句以降の独白に余白を与え、それがまた結句の過去形と呼応している。すなおだけで生きてゆけたのは幼少の頃まで、大人になるにつれ、それだけではやりきれない事に気づいてゆく。時には他人を蹴落とす狡さも必要だったかしれない。強がって、自分の心に嘘をついて、本当にたいせつなものを見失っていたかしれない。それは確かに哀しい事です。「難しかった」とあるので、ある程度の齢を経て、達観した視座で自らを見つめなおしているのでしょう。そこには、かつての青さを愛してあげられる強さと、実感と、すこしのさびしみがあるように思います。詩的飛躍の距離が丁度良い塩梅で、響きました。

    選歌その25

    • 2014.11.05 Wednesday
    • 13:41
    025:がっかり(TrackBack数1〜94)

    ■金婚の夫婦互いに少しずつがっかりしている見込み違いを(諏訪淑美さん)

     結婚50周年をむかえ、これまで互いの良い部分も悪い部分も見てこられた。それでもずっと添い遂げられてきた事は、勲章に等しいすばらしい事だと思います。離婚率が高かったり死別したりするこのご時勢では、なおの事そう思います。さて、作中では主体とその伴侶が、互いに見込み違いをがっかりしていると言います。一見してそこに隙間風を感じるのですが、何度も読み返し咀嚼していると、逆にこれは、長年連れ添った者同士の、悪意なき憎まれ口と言いましょうか、甘噛みのような愛情表現、互いに信頼しているからこそ言える言葉のように感じました。「少しずつ」という箇所に、時の経過にともなう優しさが表れているような気がしてなりません。

    ■おめあての和菓子屋すでに店仕舞いがっかり花冷えビル風の街(原田 町さん)

     ややもすると、体言止めの連続や助詞の省略は、句ごとにぶつ切れとなり流れが悪くなるきらいがあるのですが、この歌ではうまくリズムに乗せられ、イメージとイメージが繋がりあい、そこにゆるやかな流れが生じているように思います。歌意としては読んで字のごとく、目当てにしていた和菓子屋が閉店していて、自分の心情を代弁するかのようにこの街は底冷えが酷い、といったところでしょうか。前述しましたが、下句の軽やかなリズムが、この情景をシリアスたらしめない。そこが読者を置いてけぼりにさせない技術だと感じました。「おめあて」と「がっかり」が(表記としても心情の対比としても)うまく響き合っているのと、あと「花冷え」という言葉のチョイスが良いですね。都会の寒々とした寂寥感のような、雰囲気があります。

    選歌その24

    • 2014.11.05 Wednesday
    • 13:15
    024:維(TrackBack数1〜92)

    ■繊維質の言葉はチクチクするけれど翌朝スッキリしたいじゃないさ(西村湯呑さん)

     自然に放置しておいても分解しにくく、動物によっても消化されにくい。「繊維質の言葉」とは、筋張っていて味気のない、後に残るような言葉なんでしょう。フォーマルな場面なのかな。何となく「社交辞令」という言葉を思いました。そうした言葉が、喉の奥に引っかかった魚の小骨のように、断続的な痛みをもたらすけれど、翌朝スッキリしたい(から、今はこの痛みを受け入れ耐えるのみ)という意志が、含意として読めます。腰の句に据えた「けれど」の逆接が一首の中で効いているのと、結句の「したいじゃないさ」という科白回しの抗い感に希望を見出せるのが、この歌の味だと思います。

    ■ドラえもん映画で泣ける感性を維持したままでもう四十です(海さん)

     いいですね。この歌の主体が純真であるように、一首の詠み口も素直で何の衒いもない。要は、ちょっと変わった視点や表現をしてやろうとか、もっともらしく詩へ落として涙を誘ってやろうとか、そういう意図がないんですよね。まったくもって自然体。かたや二十半ばに差し掛かった自分が、胸が熱くなる感動をしても涙までは流せないその一方、子どもから大人まで広く愛されるドラえもん映画で泣ける四十の主体がいる。その感性が羨ましくもあるこの頃では、静かな語り口であるこの歌が、結句へゆくにつれ、胸に沁みてくるのです(相変わらず泣けはしないこの身体だけれど)。

    ■三日月は刃物の形 沈むとき空の繊維を引き裂いてゆく(ネコノカナエさん)

     弓なりの三日月を「刃物の形」と見立てられました。そして、その月のぼうやり浮かぶ空が、あたかもきめ細かい薄紙のように引き裂かれてゆく。独創性のある世界観で、ひとつの物語の一節を読んでいるような高揚感があります。ファンタジック。「空の繊維」とはまた言い得て妙です。言葉の情報量だけではどうしても表しきれない景というものってあると思うんですが、その垣根を飛び越えて、脳に直接その繊細な空のイメージが入ってくるんですね。もしかすれば、引き裂かれ今にも剥がれ落ちてきそうなこの儚い空は、主体の心情を表しているのかしれません。ただ一点だけ。「刃物の形」とは多分この歌で作者が一番言いたかった肝の言葉だと思うんですが、その答えをあえて歌中で言わないで、読者に「三日月はそういえば刃物の形だなあ」と読後にしみじみ思わせる構成の方が、より映えると思います。

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