題詠100★2017 出詠歌一覧

  • 2018.03.13 Tuesday
  • 21:49

001:入
入稿を終へしデスクのふせんメモ(さくらひとひら)ゆつくりはがす


002:普
別名保存の窓はさやけし「普通」とふ活字に“エゴ”とルビふりし日よ


003:共
共鳴する生きものゆゑにこのこゝろ青春群像めく春の星

 

004:のどか
「和」と書いて「のどか」と申します、といふ咲みくきやかに花娘かな

*咲み(えみ)

 

005:壊
[Enter]ガ壊死ヲシテヰル[Enter]ガ壊死ヲシテヰル[Enter]ガ壊死

 

006:統
統一感ある家具そろへわれひとりつひに部屋から浮いてしまへり

 

007:アウト
アウトロをギターのソロが抜けてゆくやうな地下鉄の残響ひらふ

*地下鉄(メトロ)

 

008:噂
風になる恋の噂のほろほろと桜リキュールをミルクで割つて

 

009:伊
緑道を伊呂波紅葉は耀つて(笑つて送り出せますやうに)

*耀つて(かがよって)

 

010:三角
しろがねの三角コーナー雪ぎをり春の闇なるこのてのひらは

 

011:億
白米へひかりは降れり億光年さきのひかりをふるさとにして

 

012:デマ
ライオンの脱走すなるデマゴギーさも独裁者のごとく響けり

 

013:創
わかれぎはの言葉ともしき帰途に購ふ創刊号のデアゴスティーニ

*購ふ(かう)

 

014:膝
膝まくら彼にする時いちりんの少女は花の顔となる

*少女(おとめ)、顔(かんばせ)

 

015:挨拶
遮断機の挨拶しあふゆふさりのよもつひらさかふみきり展く

 

016:捨
わが眸のミラーボールよ旧りゆける仟の光を豪奢に捨てて

*眸(まみ)、旧り(ふり)、仟(せん)

 

017:かつて
白波は風のリフレーンかつてこゝろ寄せしあなたの幸せを知る

 

018:苛
わりばしを左右ひとしく割れぬほどの苛立ちのあり卵黄ほぐす

 

019:駒
秋高し あづさゆみ張る日本間の朝の錦旗のその駒音の

*錦旗(きんき)

 

020:潜
行間のわたつみ潜るランボーの視し永遠とわれの息継ぎ

*視し(みし)

 

021:祭り
キスをする距離はつたなく鼓動とふラ・カンパネラの降る星祭り

 

022:往
陽の窓に羽を交はしてはつ秋の往復はがきといふ番ひ鳥

 

023:感
感傷の流れ出でまし解夏とほき半熟めだま焼きを裂きせば

*解夏(げげ)

 

024:渦
母の背の満ち潮いづこ指圧する渦をむいむい拡げてゆけり

 

025:いささか
高尚な言葉のやうに香辛料いささか添へてカレー食せり

 

026:干
昔より母の小言の減りたるを舌でころがす梅干しのたね

 

027:椿
白椿てづから枝を断ち切れり天動説のゆふやけのなか

 

028:加
いさむ手に瀧昇りゆく龍を見き加古川青流戦をみまもる

 

029:股
わが股のあはひを抜けて白龍は天へと架かる橋に恋せむ

*天(あま)

 

030:茄子
涙活につきあはされし明くる夜の茄子のみぞれ煮沁みてゆくなり

 

031:知
陽のやはき物腰ぽたぽた焼のうらのおばあちやんの知恵いまもだいじに
 

032:遮
もう何が天職なのか半休にゆつくりと曳く遮光カーテン
 

033:柱
エンタシスの柱にふれて回廊はしづもるばかり 腹を据ゑるか
 

034:姑
姑がほこりをなぞるやうにしてホイップすくふおまへの指は
 

035:厚
風光る厚焼き玉子ふくふくとわれにも咲まふひとのゐること
*咲まふ(えまう)

 

036:甲斐
空梅雨のひかうき雲を眼で追つた生き甲斐なんて学ばなかつた
 

037:難
神さまがゐたのだらうか難局を制した棋士はひかり仰いで
 

038:市
市街地はうたかた還るあてもなき水きり石を追ふ夜光虫
 

039:ケチャップ
蓋を開けてみればめためたケチャップも精細ひとつ弁当に添ふ
 

040:敬
敬老の日の縁側にのぞみつつ温かかつた肩たたき機
 

041:症
どうせなら妖精さんが良かつたと泣きじやくる子の眼の飛蚊症
 

042:うたかた
花冷えはうたかた きつと来年も聴くのだG線上のアリアを
 

043:定
ひとすぢの糸を紡ぎし定跡ゆ玉止めまでの綾なす棋譜よ
 

044:消しゴム
じゆうちようの自由いつまで消しゴムの滓は鏤められし星屑
*鏤め(ちりばめ)

 

045:蛸
お通しの蛸の酢の物つまみつつ別れ話をまた呑みこみぬ
 

046:比
カノンとふ花瓣やうやう百重なすタクトの描く黄金比より
*花瓣(かべん)、百重(ももえ)

 

047:覇
アリゾナの蒼穹を恋ふ覇王樹をはるかに仰ぐわれはわれなり
 

048:透
逆さ富士の峰をついばむ白鳥のせかいはいまし透きとほりたり
 

049:スマホ
充電のいのちの線の抜けずをりスマホスタンドの宇宙飛行士
 

050:革
革命を聴けばわるしやわわるしやわとわが最果てに蝉のさざめく
 

051:曇
ひとすくひのブルーベリーのアイスより這へる冷気の花曇かな
 

052:路
夕さりはたれかのせゐの坩堝ゆゑ見送りの後の家路とほかり
*坩堝(るつぼ)

 

053:隊
はつ夏の海自の堵列なす隊のごとき歯を見せあなたはわらふ
*堵列(とれつ)

 

054:本音
木洩れ日へかざすてのひら明け透けな本音かたれず久しき窓に
 

055:様
ポケットの領収証の上様とわれでなくとも良きわれの手と
 

056:釣
釣り銭の五円の穴に月かさね溢るるものはわが身とぞおもふ
 

057:おかえり
合言葉のやうに「ただいま」「おかへり」は黄金の黙のあはひに降れり
*黄金(こがね)、黙(もだ)

 

058:核
撞球の冴ゆるショットの核心をつく事たまにあなたは言ひぬ
 

059:埃
砂埃すぎたる夏の放水の虹のふもとにある甲子園
 

060:レース
カーテンのレースをまとふ光こそ詩として憩へゲーテ読む日は
 

061:虎
狼は二塁を虎は球を視てものがたりへとゆく夏の果
*視て(みて)、夏の果(なつのはて)

 

062:試合
土をすくふ校歌をうたふ震へならむ試合後にふる日照雨ほそかり
*日照雨(そばえ)

 

063:両
両手鍋にポトフをきみが抱へ来る夜のやうなる抱擁かさぬ
 

064:漢
漢検へはじめて申し込みし日の帰路をたどれり残業のあと
 

065:皺
皺、皺と鳴くサイダーのひとくちにたつた一度の季節のにほふ
 

066:郷
きみのその訛りが好きで望郷の空へつながるネモフィラの丘
 

067:きわめて
黄落のベンチに二人きはめては言の葉ふたひらみひらひらめく
 

068:索
歳時記の索引たどる星霜を経し指さきの先にあること
*星霜(せいそう)

 

069:倫
積ん読の『倫敦塔』をひもとけりモラトリアムの未明のやうに
*倫敦塔(ロンドンとう)

 

070:徹
カラオケの完徹ともにせし友のひとりが逝きぬ冬のトレモロ
 

071:バッハ
主よ、たれしもFineとふ名の約束の地へ向かひしか バッハ聴く夜
*Fine(フィーネ)

 

072:旬
下旬かつ花金の夕 Red Bull手にしトリルを高鳴らせたり
 

073:拗
逢へぬ日はアンスリウムの一葉の拗ねしかたちの反りに触れつつ
 

074:副
副菜を五割食して胃瘻せぬ父ゆくりなく咽せはじめたり
*胃瘻(いろう)

 

075:ひたむき
ひたむきな恋かもしれぬ冬林檎ふるへるままに頬張つてゐる
 

076:殿
舎利殿を止まり木として護りたまへ京の金風まとふ鳳凰
 

077:縛
荷造りの縛るそばからゆるぶ紐さうして大人を演じて来たり
 

078:邪魔
ふくろふの滑空おもふ邪魔駒を捨つる棋聖のかろき手捌き
 

079:冒
納豆に麦チョコ混ぜてオン・ライス冒険といふ暴挙ともいふ
 

080:ラジオ
朗読のラジオのやうにやはらかく名を呼ぶひとと合ふ周波数
 

081:徐
車窓には徐行せりける月影の親身なまでの諭しがあつて
 

082:派
冷戦とか云ふ時ぢやないたけのこ派だけどきのこと代はる代はる食む
 

083:ゆらゆら
游ぎ方おもひだせない傷秋のモビールの魚ゆらゆらゆらす
*游ぎ(およぎ)

 

084:盟
代官山のカフェの香ほのか松平盟子歌集を繰るそよかぜに
 

085:ボール
ハンカチを差し出すべきか行き時のわからぬボールボーイのこゝち
 

086:火
綿津見のおとしものなる漁り火の(あなたは何処へもゆきませんよね)
 

087:妄
しあはせはかりそめ被愛妄想のごとく胡蝶の花影に生く
 

088:聖
秋天をあはせかがみに外苑の公孫樹ちりしき聖域となる
*公孫樹(いちょう)

 

089:切符
最後まで懐かなかつたさくら猫をおもふ切符の切りこみ撫ぜて
 

090:踏
脚韻を踏む抒情詩のやうにふたり寄り添ひあゆみたき雪明かり
 

091:厄
前厄に割賦のこれる奨学金を一括返済したり従姉は
 

092:モデル
漱石の意訳うるはしきみと見るハンドモデルのやうな三日月
 

093:癖
きみの名のまろき癖字のくぼみへと溜まる光のせせらき明か
*明か(さやか)

 

094:訳
誰がために咲く冬薔薇そのふるへ点訳で読む『星の王子さま』
*誰(た)、冬薔薇(ふゆそうび)

 

095:養
堆く積まれし教養小説を読むひとの世は泉のほとり
*堆く(うずたかく)

 

096:まこと
星月夜まことしやかにまたたいて貴女に逢へたこと泣いたこと
 

097:枠
ルノアールブレンドの沁む窓枠が名画の額となる雨あがり
 

098:粒
もうそちら着く頃でせうか神戸屋の白粒あんに詰まる東雲
*東雲(しののめ)

 

099:誉
誉めらるる犬の尻尾かスピッツのアンコール曲にて手を振れり
 

100:尽
つかのまは永く美し見納めに桜尽くしの膳を食しぬ

 

 

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寄り道コース

 

101:轢
軌跡なき軋轢のなし薄荷飴わけあひながら話し合ひせり
*軋轢(あつれき)

 

102:鼎
しづやかに始められたる鼎談のやうに聴きをりジャズ三重奏
*鼎談(ていだん)

 

103:スパナ
クランクインすれば忽ち俳優のスパナで締むる音のするらし
*忽ち(たちまち)

 

104:欅
第三次反抗期として欅坂46のアルバムを買ふ
 

105:饒
『豊饒の海』を読みし日とほくなり『前前前世』くりかへし聴く
*豊饒(ほうじょう)

 

106:鰆
われにのみ甘えてくるるひとの焼く鰆のムニエルほぐしたりけり
 

107:蠱惑
蠱惑的なきみも好いかもチョコレートフォンデュの苺なべて絡めて
*蠱惑(こわく)、好い(いい)

 

108:嚢
国会の苛烈きはむる討論の氷嚢たれも取り替へもせぬ
*氷嚢(ひょうのう)

 

109:而
なぜ好きか形而上のことなど知らぬその温もりを抱きしめてゐる
*形而上(けいじじょう)

 

110:戴
雪暗れの星を戴く漁師よりシリウスのごと銀鱗とどく

*雪暗れ(ゆきぐれ)、戴く(いただく)

 

参加表明(山本貴幸)

  • 2018.03.13 Tuesday
  • 21:48

昨年も、五十嵐きよみさんの主催する題詠マラソン(正式名「題詠100★2017」)に参加させていただいた。

事前に決められたお題のワードをそれぞれ歌に詠みこみ、100首完走を目指すというもの。寡作の自分には結構な量。

しかも今回は「寄り道コース」と銘打って、プラス10首の(詠みこむのがかなり難しい)お題のワードも追加され、全面クリア後の隠し特典要素のように充実感が凄い。

 

スタートラインを発ったのは丁度、昨年六月の朔日で、途中、沿道にコースアウトしたりもしたけれど、約半年をかけて、何とか完走することができた。

そしてその時の勢いで、寄り道コースも完遂してしまった。元来寡作なのに、勢いって凄い(乏しい語彙力)。

 

ともあれ、その完走の証をここに記そうと思う。お目通しいただければ幸い。

なお、全首を一覧にして掲載し、その中で何首か推敲した歌を別記事にアップしたい。
今年の題詠100★2018はもう始まっているけれど、自分はまだスタートを切れていない。何とか参加したいとは思う。

題詠100★2017 推敲歌一覧

  • 2018.03.13 Tuesday
  • 15:54

023:感
感傷の流れ出でまし解夏とほき半熟めだま焼きを裂きせば

 

「せば〜まし」の構文は反実仮想。事実ではないことを仮想する、という意味だ。

この歌は倒置してあるので、本来なら「解夏とほき半熟めだま焼きを裂きせば感傷の流れ出でまし」となる。

 

しかし、作意としては「感傷の流れ出で」の部分を反実としたかったが、

この構文は「せば」以前の文が反実であるため、作意と構文との間でズレがある=用法の誤りが生じている。

よって、以下のように推敲した。

 

感傷の流れ出でたり解夏とほく半熟たまごの目玉を裂けば

 

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028:加
いさむ手に瀧昇りゆく龍を見き加古川青流戦をみまもる

 

「勇む」と漢字にした方が、勢いが出て「昇りゆく龍」と響き合う。

 

勇む手に瀧昇りゆく龍を見き加古川青流戦をみまもる

 

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041:症
どうせなら妖精さんが良かつたと泣きじやくる子の眼の飛蚊症

 

「飛蚊症」は眼の症状であるので、わざわざ「眼の」と詠むのは字数の無駄遣いである。

この二文字分を使って、今現在泣き続けているという時間の幅を詠みこみたい。

 

どうせなら妖精さんが良かつたと泣きじやくりたる子の飛蚊症

 

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059:埃
砂埃すぎたる夏の放水の虹のふもとにある甲子園

 

「夏」「甲子園」のワードが離れていて、地名の「甲子園」を詠んだ歌ともとられかねず、

そうなると一体何の「砂埃」なのか、となってしまう。

いっそ「球児ら」と言って、情景・場面を決めてしまった方が解りやすく、少なくとも誤読の恐れは解消できる。

 

球児らの砂埃さり放水の虹のふもととなる甲子園

 

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063:両
両手鍋にポトフをきみが抱へ来る夜のやうなる抱擁かさぬ

 

結句「かさぬ」は「重ねる」という動詞の文語の終止形「重ぬ」だが、

ひらがなに開くと「貸さぬ」と誤読されてしまうかもしれず。

 

両手鍋にポトフをきみが抱へ来る夜のようなる抱擁かさね