選歌その3

  • 2014.03.19 Wednesday
  • 17:39
003:育(TrackBack数1〜85)

■俺が俺が隅でじっくり育ててたカルビをカルビをお前はお前は(西村湯呑さん)

 眼に入れても痛くないほど可愛がって育てていたカルビを横取りされて、ワナワナ震えているんですね。どこか漫画チックでクスリときてしまいますが、情景がすごくよく伝わります。二句三句以外は全て字余りですが、繰り返すリズムが良く、気になりません。心底悔しがっている雰囲気が出ています。

■「会いたい」の欠片を高く積み上げて超えないための壁を育てる(こはぎさん)

 「会いたい」という思いの裏には、きっと「しかし会ってはならない」とどこかでとどまる気持があるのだろうと思います。そのため「会いたい」という思いの欠片を高く積み上げて、自分がそのひとに会いにゆけないよう、その線を越えないよう、あえて壁を作るのだと。いじらしいですね。

■ぬくもりを育みながら駅に着くきみの左手わたしの右手(中村成志さん)

 その後の展開が様々に想像される歌です。おそらく恋人同士が手を繋ぎながら駅までやって来た。そこから先、つまり駅から発ってゆくのは二人一緒になのか、あるいはどちらか一方だけ(もう片方は見送り)なのか。どちらの読みでも「育みながら」という未来がありますが、読後にすこし淋しさを覚える後者の読みで採りたいです。

■わたくしの少女ほほえむイルカからクジラに育つ雲をみつけて(中西なおみさん)

 「わたくし」のなかに少女である部分があって、あるときふと、イルカのかたちをした雲が流れながれてクジラに成長する様を見た。雲に何かのかたちを見出すのは童心ならではですが、それがイルカからクジラに育つとなると、わたくし自身の少女性が成長したことをも示唆しているのではないかと思われます。そうなると「ほほえむ」が意味ありげに映り、妙な存在感を放ちます。

■体育を休んだ彼女は他の子の誰より女になっていたのね(永乃ゆちさん)

 何でしょう。ジブリ映画の『おもひでぽろぽろ』を思い出します。女性にしか知りえない生理の大変さがあって、特に学校では、女子生徒どうし秘密を共有しあうような、男子生徒には不可侵のミステリアスな領域があったと思います。結句「なっていたのね」には、今にして思えばと回顧するニュアンスがあります。体育は「体が育つ」と書くのに、それを見学した「彼女」が実は誰より育っていたんですね。

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  • 2017.11.30 Thursday
  • 17:39
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    コメント
    この度は育のうたを取り上げて頂きありがとうございます。ほほえむ、に対して深く読んで頂き、我ながらそうなのか!と驚いております。私は読む事には自信がないので鑑賞はしておりませんが、自分と違う目線で読まれているのを拝見しておりますと、新しい発見があって楽しんでおります。鑑賞は孤独な作業だと思いますが是非続けて下さい。なるほどなあ。と、読ませて頂きたいと思います。
    今回は選歌頂きありがとうございました。
    • 中西なおみ
    • 2014/03/21 3:42 PM
    >中西なおみさん

    わざわざコメントくださりありがとうございます。

    さいしょ選歌する際に「ひと言」と言ったのに、だんだんと本来の冗長駄文グセが出てくるようになりました(^_^;)
    読みも相当ハズレていると思いますが、そんな拙文にお付き合いくださり、こちらこそ感謝感謝です。

    どうぞこれからも題詠blogの方でよろしくお願いしますm(_ _)m
    • @貴
    • 2014/03/21 10:09 PM
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